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ゲームやなんかの好きなものについて語ります。
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今回は二人新登場。
再プレイしないと話口調がなんだか覚束ないです…。
ちなみにリィンとマキアスが泊っているホテルですが、そのつもりまったくなかったのにリィンのホテルを「西風」にしていたので、ならばと対比させてマキアスの方をつけました。
ほんとは星座ですが、まぁそこは。

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ジュライでの二日目。
リィンは太刀をホテルに置いて、行政地区へ向かってみることにした。
早くブラウン・シュガーへ行ってみたいのは山々だったが、まだ朝早いこと、開店時間を昨日確認しなかったこともあって一旦まだ回っていない地区を見てみることにしたのだ。
行政地区には他の地区より高い建物が多いようだった。
その中でもジュライ議会の本拠地にあたる議事堂は頭抜けて高く、中心の尖塔は街のどこからでも見ることができるほどだ。
リィンはとりあえずその議事堂を目指してみることにした。
本気で会える期待をしたわけではなかったが、ジュライ独立を決めた議長の姿を見てみたいという気がしたからだ。
昨日見た通り行政地区の中は特に兵士の姿が多かった。
かならずどこかに兵士の姿があり、厳しく周囲を警戒しているように見えた。
(まぁ…あんな昨日みたいな襲撃があるんじゃ警戒もするよな…)
だがジュライの中でそんな風に争っているようで、いざ首都と戦うとなったらどうするつもりなのだろう。
やはり正気の沙汰とは思えなかった。
そんなことを考えながら歩いているとあっという間に議事堂の前に辿り着いていた。
兵士が多いものの、役所などもあるためか一般人がいないわけではない。
怪しい行動さえ取らなければ見て回ることはできるようだった。
「ええいうるさい!何度言っても同じことだ!」
「ん?」
怒鳴り声に目をやると、議事堂の敷地内へ続く門の前で誰かが揉めているようだった。
「あれは…」
リィンは目を瞠った。
門の前で衛兵に突き飛ばされて尻餅をついている少年に見覚えがあった。
少年は今にも剣を抜きかねない様子の衛兵にも臆することなく立ち上がった。
「だから僕は首都議会からの正式な使者だと言っているだろう!とにかく議長と話をさせてくれ!
証拠ならこの議長印のある委任状がある!」
「議長はお会いにならん!大体貴様のようなガキの何が使者だバカバカしい!」
「だ、だから委任状があると言っているだろう!取り次ぎくらいしてくれたって…」
「あ、あのすみません!」
リィンはなおも食ってかかろうとする少年の腕を引っ張って割り込んだ。
お互いに向けられていた剣呑な視線が一気にリィンに移る。
「こいつ正義感の強いヤツで、ここしばらくの爆発事故ですっかり熱くなっちゃって。
なんとしてでも議長に直談判しにいくなんて…ご迷惑おかけしました」
「なにをもがっ!」
リィンは反論しようとした少年の口を塞いで耳元に顔を寄せた。
「これ以上ここで騒いでも相手を頑なにさせるだけだ。一旦引こう」
「…くっ」
少年が大人しくなったのを確認するとリィンはそのまま少年を引きずるようにして後ずさり始めた。
「本当にすみませんでした。では失礼します…」
「ふんっ」
衛兵もこれ以上こだわるつもりもないようで姿勢を正して視線を前の通りへ戻した。
(…ん?)
その様子を確認していてリィンは初日に兵士たちを見ていて感じた違和感をもう一度感じた。
そして、その正体に気付いた。
(これは……)
「ええい、いい加減離してくれ!」
「あ、すまない」
もうだいぶ門からは離れたが少年を羽交い絞めにしたままだった。
少年は息をついて身なりを整えると戸惑ったような表情でリィンを見た。
「君は一体何物なんだ?何故僕を助けるような事をした?」
問われてリィンは言葉に詰まった。
一方的に感じた既視感に衝き動かされて助けたといっても不審がられるだけだろう。
「…特に深い意味はないんだ。あのままじゃ良くないことになりそうだったから、つい」
苦し紛れに言って相手の反応を伺う。
少年は真っ直ぐな目でリィンを見つめ返してきた。
ひらすら真意を見定めるような鋭い視線をリィンもしっかりと受け止めた。
「でも、迷惑だったらすまなかった」
「………いや」
少年は指先で眼鏡を上げると少し微笑んだ。
「お人好しだな君は。…僕はマキアス。首都から来た」
差し出された手をリィンも微笑んで握り返す。
「俺はリィン。ユミルから…ええと、知り合いを訪ねてきたんだ。…さっき首都議会の使いとか言ってたようだけど…俺と同じくらいに見えるけど、すごいんだな」
素直な感嘆をこめて言うと、マキアスは気まずそうに目を逸らした。
「本当の事を言うと使者と言っても正式なものではないんだ。僕はただの議員見習いの勉強性なんだが、議会にその…知り合いがいて、今回のジュライの一件で困っているようだったから。それでせめて様子だけでも報告できればと思ったんだが…思っていたよりもまずい状況みたいだな」
マキアスの言葉にリィンは頷いた。
ジュライに来た時から兵士の姿に感じていた違和感。
先ほど近くで兵士を見てその正体に気付いたのだ。
「…ジュライの兵士は国章をつけていない。議会は本格的にエレボニアに反して独立するつもりだ」
まるで制服の一部であるかのように襟元に飾られる国章はどこの州兵であろうと議会直属の兵士であろうと必ずつけることを義務付けられている。
それを外すということはジュライの兵士は独立に賛同し、既にエレボニアの国民であることを辞めているということを意味している。
「このままではまずい。議会の強硬派は正規軍を出しての鎮圧も辞さない構えだ。今はまだ穏健派が相当数いて拮抗しているし、議会の意見が一致するまで正規軍は動かせない。だがそれもいつまでもつか…このままじゃ内乱になる」
マキアスの言葉に唐突にリィンの胸の奥に震えるような不安が走った。
内乱などという言葉はここ200年平穏を保っているエレボニアには無縁の言葉だ。
ましてリィンには全く実感の湧かない言葉なのに、その響きは妙な焦りと不安を伴った。
それはマキアスも同じようだった。
険しい表情で議事堂を見上げたマキアスの視線を追ってリィンもそちらを見た。
「ジュライ市民この独立をどう考えているのかは知らないが、内乱なんかになれば確実に市民は巻き込まれる。戦場は状況的にジュライ周辺になるだろうし、そうなればどれだけ正規軍が気を払っても市民の犠牲が皆無というわけにはいかないだろう」
マキアスは苦渋の表情で拳を握り締めた。
「それだけは、させるわけにはいかない。なぜだかわからないが強くそう思うんだ」
まるでマキアスの言葉に呼応するようにリィンの頭にいくつかの光景が浮かんだ。
炎に揺れる町並み、泣き喚く子供、逃げ惑う人々。
そしてたくさんの人々に囲まれてベッドに横たわる老紳士。
流れていく水のように過ぎて行った光景にリィンの胸が切なく痛んだ。
「先ほどは失敗したが、僕は諦めない。絶対に内戦なんて起こさせてたまるか!」
言い放ったマキアスの瞳に決意の光が宿るのを見てリィンは更に強く彼を知っている、と感じた。
同時に力になりたいという気持ちが湧いて来て、それを自覚するよりも先に口が開いていた。
「マキアス、俺に何かできることがあれば言ってくれ。ジュライには来たばかりで大した力にはなれないかもしれないけど…力になりたいんだ」
リィンの申し出にマキアスは虚を突かれたように目を瞠った。
「…君は本当にお人好しだな。普通だったら怪しむところだが、何故か君は前に会ったような気すらする」
マキアスも同じように思っていてくれたことが嬉しくてリィンは顔を綻ばせた。
「実は俺もなんだ。俺は首都に行ったことがないから会っている可能性は低いけど…それでも何かの縁じゃないか?」
「…そうかもしれないな」
マキアスは気恥ずかしそうに眼鏡を押し上げながら、それでも表情を緩めた。
なんだかこの空気がひどく懐かしく感じて、同時に何かたくさんのものが足りないようなすかすかした寂しさを覚えた。
(…なんなんだろう、ジュライに来てから何度もあったこの感覚。もしかしたら…クロウに会えばそれで済むってことじゃないのかもしれないな…)
ジュライの独立騒ぎの裏で自分にも何かが迫っている。
そんな気がしてリィンは身震いした。
「とはいえ、僕もこれからどうするか決めているわけじゃないんだ。一旦ホテルに戻って作戦を練り直そうと思うが…君はどうする?」
「え?あ、あぁ、俺はちょっと行くところがあるから…商業地区の辺りだろ?一緒に戻るよ」
実体のない物思いから我に返って答えるとマキアスは怪訝そうな顔をしながらも頷いて身を翻した。
リィンも頭を振って今はどうにもならない不安を振り払う。
数歩進んでマキアスはもう一度頭だけで振り返って議事堂を見上げた。
まるでそこに何かの敵でも潜んでいるかのように睨み付けて、また歩き出した。

                     ※

行政地区に比べると商業地区はかなり人が多いようだった。
マキアスによると観光客はだいぶ減っているようだが、それでも街行く人々の喧騒からは内乱間近という雰囲気は感じられない。
「マキアスはどlこのホテルに泊まってるんだ?」
「その先の『レッドスコーピオ』というホテルだ。名前は物騒だがサービスはなかなかいいぞ。リィンはその知り合いとやらの家に滞在してるのか?」
「あ、いや俺もホテルだよ。その先の『ウェストウィンズ』っていう…」
言いかけた時、また首筋に予感が走った。
咄嗟に顔を前に向けたと同時に爆音が鳴った。
「また…!」
「な、なんだ!?」
爆炎が立ち上ったのはまた工場地区の方だった。
周囲はあっという間に悲鳴やら不安そうなさざめきでいっぱいになる。
「いったい何が起こったんだ?!」
「独立派と反対派の抗争らしい。昨日も同じ辺りで爆発があったんだ」
「くっ……」
マキアスは少しの間立ち上る煙を睨み付けていたが、ぐっと唇を引き結ぶと爆発が起こった方向へ駆け出した。
「ちょっ、マキアス!?どうするつもりなんだ!?」
「このまま見過ごせるか!行って救助でもなんでも手伝う!」
「ちょっと待て…ってああもう!」
マキアス一人を行かせるわけにもいかず、リィンは彼を追って走り出した。


近くまで来ると思っていた以上にすさまじい有様だった。
炎は建物を包んで高く燃え上がり、あたりは煤色の煙が充満している。
「マキアスー!」
人ごみをかき分けながら走ったせいで途中で彼を見失ってしまった。
どうするつもりなのかわからないが、こんなところに入り込んではもしものことがあってもおかしくない。
「くそっ…視界が悪すぎて…!」
何かの工場の一つらしき鋼色の建物は薄い紅色に染まってゆらゆらと揺れて見える。
進むのを躊躇する熱量が迫ってくるが、それ以上に彼に何かあったらという焦りが胸を衝いた。
「行くしかないか…!」
リィンは意を決して口を袖で覆いながら炎の中へと進んで行った。
幸いというべきなのか、辺りには生きているものも死んでいるものも人の姿はまったく見えない。
(避難した後なのかな…それにしたって、消火している兵士すらいないのは…)
煙で涙の浮かんでくる目をこらして周囲を見回す。
まるでこの世に自分だけになってしまったのかと思うほど誰もいない。
「マキアス!どこにいるんだ?!」
呼びかけてみるが熱が喉を焼いて咳き込んだだけで返事が返ってくる様子はない。
(まずい、このままじゃ俺も…!)
どこかで崩れ落ちるような音も聞こえる。
あまり長くここにはいられないようだった。
(どうする…!というかどこに行っちゃったんだよマキアス!)
どうして今日話したばかりの相手の為にこんなに必死になっているのだろうとふと考える。
初めて会った気がしない。そしてあの思いこみの強さと真っ直ぐさを「らしい」と思う。
(なんなんだろう…この「知らない想い出」は…)
ふと昨日聞いたアンゼリカの言葉を思い出す。
前世で会ってでもいなければ。
アンゼリカはそう言いかけたのだ。
(前世だなんてバカげてると思うけど、どこかでそれで納得している俺がいる。クロウ達に感じる懐かしさと、あの夢…)
追い続けるクロウの背中。
そしてジュライに来てから度々よぎる、覚えのない記憶。
前世の自分の記憶なのだと言ってしまえば説明がついてしまうのだ。
(うーん、火に包まれながら考えることじゃないな…)
苦笑した瞬間、リィンは背筋に冷たい気配を感じて弾かれたように顔を上げた。
燃え盛る中に一つだけまだ火が回っていないタンクのようなものがある。
その上に小さな人影があった。
「誰だ!?」
「……そっちこそ、誰」
返ってきた声は驚くことに少女の声だった。
ぶわ、と熱風が炎と煙を吹き散らす。
その向こうに銀色の髪をした小柄な少女の姿があった。
(え……)
猫のような瞳と視線がぶつかって、またリィンの胸にあの感覚が湧き起こる。
リィンはあえて、その感覚に集中してみることにした。
すると胸の奥から一つの名前が浮かんできた。
「……フィー」
ぴくり、と少女が体を震わせた。
「なんで、わたしの名前…」
少女はタンクの上から目をこらしたようだった。
そして困惑したような顔をして、探るように自分の胸元を押さえた。
「リィン…?」
「…あぁ」
名前を呼んでくれたことが嬉しくてリィンは笑みを零したが、呼んだ本人は自分がその名を呼んだことに戸惑っているようだった。
フィーは音もなくタンクを蹴ると見上げる高さを事もなげに飛び降りてきた。
「なんだか猫みたいだな」
目の前に立ったフィーに苦笑してみせたが、彼女は真剣そのものの表情でじっとリィンの目を見つめてきた。
(猫って…目を逸らしたら負けなんだっけ)
別に負けたくないと思ったわけではなかったが、リィンもフィーの大きな瞳から目が逸らせなくなる。
先に目を逸らしたのはフィーの方だった。
まだ困ったように落ち着かない表情をしながら軽く地面を蹴ってリィンから距離を取った。
「早くここを出て。死にたくなければ」
「!」
まただ。
リィンはそう思って唇を噛んだ。
クロウも何も説明せずにただジュライから出て行けと言った。
どうしようもない疎外感と寂しさを感じてなんだか腹を立てたような気持ちになった。
「そういうわけにはいかない。友達がこの中に入っていってしまったんだ。マキアスを見つけるまでは俺も出て行くわけにはいかない」
「マキアス…?」
フィーはまた戸惑ったように胸を押さえた。
どうやら彼女はマキアスの名前にも反応しているようだった。
なんとなくそれにほっとしながらリィンは頷いた。
「大体危ないのはフィーも同じだろ。ここから出るなら一緒にだ」
「わたしは別に…んー…まぁいいや。とりあえずそのマキアスをさがそ」
「手伝ってくれるのか?」
こくん、とフィーは頷いて、左手の方を見つめた。
「他のところは一通り見て誰もいないの確認済み。多分いるならあっち」
「よし、行ってみよう。あまり長くはかけられない」
「ん」
先行して音もなく走り出したフィーの後を追って、リィンはまた走り出した。

続く!
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